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2年間(2009-2010)の活動を踏まえた学会活性化の視点

阿部 治

本稿執筆中に東日本大震災が起き、加えて東京電力福島原子力発電所で大事故が発生しています。大地震という自然の圧倒的な脅威の凄まじさと、制御不能に陥り解決の糸口すらつかめていない危機的な原発事故に直面し、これまで私は一体何をしてきたのだろうかと自問するとともに、環境教育にかかわる者の責任と環境教育の果たす役割について改めて考えなおしています。東日本大震災の被災地でも以前から行われていたツナミ教育は、2004年12 月のスマトラ島沖地震とそれに伴う大津波を契機に日本発の防災教育として教材化され、海外に紹介されていました。また、原発に依存しなければならないほどのエネルギー消費を前提とした今日のライフスタイルの見直しや再生可能資源の普及は、まさに環境教育の主題に他ならなかったはずです。今夏の研究大会ならびに新たに設けるプロジェクト研究を通じて、これらの問題については重点的に取り組んでいきます。

さて、2010年の名古屋での生物多様性条約締約国会議(COP10)を機に、生物多様性や気候変動化問題などへの関心が一層喚起されるとともに、食糧問題や無縁社会、過疎化の進行などの社会的要因も相まって持続可能な社会の構築に向けた人々のニーズは一段と高まってきています。このことは結果的に、環境教育の役割の重要性を際立たせ、人々の環境教育への期待を高めてきています。学会理事会としては、この2年間、このような社会の変化に対応した強力な学会を創りあげるべく種々の取り組みを行ってきました。時代の変化に対応した規約の改正、支部の設立を含めた学会活動の活性化、国内外の学・協会との連携、環境教育の浸透(教科書の編集など)に向けた活動などです。これらの活動は、着実に成果をあげてきており、今後も充実・発展させていきます。また、研究者と実践者が共に集う学会という本学会の特徴を生かして、実践の一般化という視点で実践者と研究者をつなぐマッチングは会員の期待にこたえる活動であり、研究活動の活性化を促し、学会の足腰の強化にもつながることから、新たに取り組んでいきます。

これまでの本学会の活動は、会員管理や学会誌の発行、大会の開催といった学会としての基本的活動が主で、時代の変化に対応した活動を意識的には追及してきませんでした。しかし、新しい公共や持続可能な社会という言葉に象徴されるように市民の社会参加や持続可能性の追求が社会の主要な関心事になり、日本学術会議においても社会に貢献する学問のあり方が推奨されるなど、環境教育をとりまく社会状況は大きく変化してきています。このような社会の変化の中での環境教育学の役割を明確にし、持続可能な社会の創造に寄与する環境教育学の構築が喫緊に求められています。このためには、会長や理事の交代に左右されることなく、研究という学会としての基本的活動を堅持しつつ、中長期的視点に立った学会運営を行っていくことが必要です。

その視点として、学術の世界における環境教育学のニッチェを確保することと、持続可能な社会に寄与する環境教育の普及という大きく2つの視点をあげることができます。前者は、研究活動の活性化や学・協会間のネットワークの構築などを基盤にした日本学術会議など学術界でのプレゼンスの確保です。学術界におけるプレゼンスは、環境教育学を社会に認知させる上で非常に重要であり、環境教育の普及とも密接にかかわっています。そのためには、充実した研究誌を継続的に刊行していくことはもちろんですが、本学会として日本学術会議に代表を送ることや環境教育という視点で関連学・協会のネットワークを主導していくこと、「環境教育」を科学研究費の細目(申請領域のこと)にすることなどが求められます。後者は、学校教育や社会教育、企業内教育などにおける環境教育の制度化や人材養成、さらには大学の環境教育関連専攻の設置や増設など、広く環境教育の必要性を社会に知らしめ、その普及を担保する活動です。

これら2つの視点を持ちながら学会活動を展開していくことが、研究者や実践家、政策立案者、事業者など、幅広い環境教育のステークホルダーを会員として獲得することができ、学会の持続的活動を担保することにつながるのです。また、中長期の視点に立った学会活動を考える際には、持続可能な社会の構築に向けて環境教育がしっかりと機能している社会を想定し、そのためには学会としてどのような活動が必要であるかといったグランドデザインを描くことが必要です。環境教育が機能している社会には、多くの要素をあげることができますが、少なくとも(1) 環境教育が目指している環境リテラシーや生きる力を身につけることが重要な学力の一つとして社会で認知され、学校教育の中で位置づけられている、(2) 児童・生徒が環境教育に接する時間が制度的に担保され、指導者が存在している、(3) 環境教育が生涯学習の中で系統的に位置づけられている、(4) 環境教育が企業内教育の一環として位置づけられている、(5) 環境教育指導者育成のシステムが存在していることの5点をあげることができます。持続可能な社会のビジョンは多様ですが、それらを考え創造していく人々を育てるインフラは共通なのです。

(あべ おさむ・学会長/立教大学)

環境教育ニュースレター92号(2011年3月30日)p.3-4所収

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